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「大丈夫かな、なお……」
「受験? 大丈夫だろー。あいつ頑張ったもん」
キッチンカウンター越しに、コーヒーを準備しながらの私の呟きを拾って純平が答えた。
「あの人一体どんな魔法使ったんだろうな」
と、可笑しそうに笑いながら。
「ほんとだよね……うん、分かってるけど、あの子が頑張ったことは」
なおと純平の勉強を見るのはずっと私の役目だった。
ほぼ全教科に渡って、いつも赤点すれすれの綱渡り状態だったはずのなお。
それが1年前、ちょっとしたきっかけで先生役を先輩に引き渡した瞬間に。
目標が出来たからか、よほど先輩の教え方が上手いのか……なおはいつの間にか、勉強に対して拒否反応を起こさなくなった。
それどころか好きになったくらいの様子もあって、正直ちょっと、悔しい。
先輩がいる福岡の大学を受けると言っても、それでも同じ大学なんて当然なおの学力では及ばず。
けれどこの1年でやりたいことを見つけたなおは、ちゃっかり彼の近くにその分野に特化した大学を見つけて志望校に決めていた。
私や純平に、なんの相談もなく。
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