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ことん、と小さな音をたて、純平が待つテーブルにコーヒーのカップを置く。
「すぐ用意するから、ちょっと待っててね」
そう言ってキッチンに戻ろうとした手を、不意に掴まれた。
「……淋しい? なおが先輩に取られちゃうの」
――優しい、まっすぐな目。
ずっと3人で過ごしてきたから……純平ももしかしたら、それは、同じ感覚なんだろな。
「取られちゃうって言うか……うん……なおが遠くに行っちゃうのは、淋しい」
こういう弱音は、あんまり吐かない。
言えば純平は、きっとめちゃくちゃに甘やかして慰めてくれるのは分かってるけど。
……分かってるから、か。
小さい頃からずっと、本当はなおも欲しがっていた純平のそれを、私の方が多めに貰って来た自覚はある。
独占、てほどじゃないけど。
なおに対して、少しの優越感と同時に、罪悪感も常にあった。
付き合い始めてから尚更、自戒というか、自制が働くようになったような気がする。
けど今は、弱気になってというよりも、純平とその感覚を共有したくて。
するりと正直な言葉が零れた。
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