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「大丈夫だよ。離れてても何にも変わらねえから」
純平は、椅子に座ったまま。
すい、と引き寄せられると、いつもは見上げている目線が、逆転する。
「――大丈夫」
もう一度そう言った純平が、ゆるく腰に手をまわしてきて。
甘えるように抱きついてきたこいつに、慰められてるんだか、こっちが慰めてるんだか分からなくなる。
ついこっちも純平の背中に手をまわしたのは、無意識だった。
私と純平が付き合い出したら、なおとの3人の関係は壊れるんじゃないか。
あの頃、誰もが口に出せずに、こっそり抱えていた不安。
でもなおは、変わらずに仲間でいてくれた。
今度もきっと――、物理的に開く距離は不安だし、淋しいけれど。
「大丈夫、だよね……」
ぽすんと私の肩口に顔を埋めている純平の髪を、そっと撫でた。
不安を埋めあうように、淋しさを分け合うように。
もぞ、と腕の中で動いた純平が顔を上げる。
……あ、近い。
恋人同士の距離に気が付いて、怯んで力が抜けた。
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