第1章

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人類と彼らに利用価値を見出された家畜のみが生きる世界。 それらは永く続かなかった。 感染症や地殻変動。滅びの要因はいくらでもあった。 家畜は悉く死に絶え、周囲の環境を調整できる人類のみが生き残る。 人類は幾度の災難を克服するため自らを創り変えることに執心した。 多くの失敗を積み重ね人々は生き延びた。 それらは交配を繰り返し、様々な種類に分化した。 あるものは被食者であり他方は加食者である。 力の強いものや奇抜なものが少数で狩りをする一方で、他の凡庸なものはコミュニティをつくりコロニーで繁殖した。 やがて彼らは気付く。 彼は私であり、私は彼なのだ。 幾重にも別れた枝は一つの幹に集束し、枝の先に たわわに実る果実は多少の違いはあれ、その根源たる幹や根より出でたものであるのだ。 それを認めた時、彼らは互いに歩み寄った。 長い年月をかけて元のヒトに戻っていく。 だが、争わねば人は生きられぬ。 人がヒトである以上、生き物であるから。 もう一人の細胞の息を止めるまで互いに傷つけ合うことをやめられぬ悲しい性。 人は一人でさえ細胞と悪性新生物が喧嘩を始める。 一度自分を複製し損なえばそうなる。 だから同じ人間をどんどん増やそう。 私をあなたにあなたを私に。 さぁ始めよう。
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