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預かったプリントを手にそのまま午後の授業を出る気にもなれず、俺は学校をサボって電車に乗った。昼過ぎの下り電車はガラ空きで、7人掛けの長椅子に俺は一人腰を下ろした。同じように目の前に座っているスーツ姿のサラリーマンがうつらうつらと船を漕いでる。その背後に見える窓の外は薄暗い。もうすぐ雨が降るんだろう、重苦しい雲が立ち込めていて空が低く感じられた。
朝方まで眠れなかったせいで体がだるい。奥寺と昼休みに会えなかった事でがっかりしたけれど、学校以外で会える理由も出来た。とりあえずプリントをどうするかは家に帰ってから考えよう。そう思った矢先、ポケットの中でスマホが震えた。画面には奥寺からSNS経由のメッセージが届いた通知が表示されている。
液晶を指でゆっくりとなぞってそのメッセージを開いた。
奥寺
-ごめんキシロ、もう昼休み終わってるよな。今日学校休んだんだ。
-A組の奴に聞いた、忌引なんだろ。
既読
奥寺
-そう。
-プリント預かってるけど、どうすればいい?
既読
その後、しばらく反応が無かった。俺の書いたメッセージに既読の表示が出ているからおそらく読んではいるんだろう。あと2つで奥寺の家の最寄り駅という時に返事がきた。
奥寺
-今日俺んちくる?
-葬式やってんじゃねーの?
既読
奥寺
-死んだじいちゃん北海道の人だから、家族みんな北海道に行って居ない。
-は?なんでお前は行かねーの?
既読
奥寺
-まー、色々あって。とにかくさ、学校帰り俺んち寄ってってくんね?
-学校サボったから、もう電車乗って帰るとこ。
既読
奥寺
-マジか?いま何処よ?
-奥寺んちの最寄り駅の一個手前
既読
奥寺
-え
-あ、もう駅着くわ
既読
奥寺
-じゃ、家来いよ!
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