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昨日言っていた、性的に好きかって確認は奥寺の意思表示で、その感情にあいつはきっと負い目を感じているんだろう。それでも俺は、奥寺と少しでも一緒に居られるなら、それでいい。
そうだ、それでいいんだ。最初からそういう関係なんだし。
奥寺の顔をじっと見つめてみたけれど、やはり感情は読み取れない。怒っているでもない、笑っているでもない、無関心なようで強かにも見える。乏しい表情があんなに苦手だったはずなのに、こういう時の奥寺の顔にゾクゾクしている自分がいる。
不意に軽やかなメロディが廊下の奥から聞こえた。風呂が湧いた事を知らせる音だと奥寺は笑った。
「別に、キシロが帰りたかったら帰っていいし、無理強いするわけじゃねーけど…」
「泊まっていいなら泊まる」
奥寺の言葉を遮って俺は答えた。
「そっか、ま、風呂湧いたし、とりあえず入って来いよ」
廊下の突き当りにある風呂場へ案内され、さっき使ったものとは別の新しいタオルと、奥寺の部屋着と下着を渡された。
「俺のだけど洗濯したやつだから我慢して使って」
「うん」
「風呂で一人でしごくなよ」
「……!ばかじゃねーの!!」
バスタオルを投げつけたがうまくかわされた。
「ごゆっくり~」
そう言って奥寺が脱衣所のドアを閉めた。床に落ちたタオルを拾いながら俺は少しの違和感を覚えた。
どうして奥寺は突然俺を家に呼んだんだろう。なんで急にこんな、まるで友達同士みたいなやり取りを始めたんだろうか。
嫌な予感がする。
もし、セフレという関係に負い目を感じはじめていて、今日を最後にこの関係を終わらせようとしてるのなら…ただの友達、顔見知りに戻ろうとしてるんだとしたら…?
とにかくそれだけは避けたい。せめて体だけでも俺は奥寺と繋がっていたい。
だとしたら俺が出来る事は唯一つ、奥寺に負い目を感じさせないよう、セフレとして楽しんでいる対等な立場だと思わせるしかない。
俺の感情とは別として。
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