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綺麗だけど、
花火は花火じゃん、
なんて。
それくらいの感想しか
持ち合わせていなかった。
──拓海さんがいないと、
あたしなんてこんなもんだ。
みんなはキラキラした目で
花火を見ていて、
羨ましかった。
もうひとつ溜め息をつきながら、
視線をいつもの高さに戻した──
瞬間。
後れ毛が色っぽい、
浴衣姿の女の人のうなじを
さらっと撫でながら、
拓海さんが歩いているのが見えた。
何だあれ。
──やっぱり、そういうことか。
納得はした。
涙は出なかった。
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