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お互いのチョコレートを交換する形で受け取り、呆然としたままコンビニの外へ出た。
…そろそろこの先の公園に男が迎えに来る時間だから、急がなきゃ。
渡す予定のチョコレートを確認しようと目を落とすと、否応無しにヤンから貰ったチョコレートも目に入った。
「……」
知り合いに毛の生えたような間柄のヤンから、贈り物?
いや、私もあげたけど。
…間違ったバレンタインの知識を持っちゃったのかも。
それ、ありえる。
「雫」
思い浮かべていた人の声がすぐ背後から聞こえ、薄暗くなってきた駐車場に踏み出していた足がピタリと止まる。
振り向き、目がヤンを捕らえた瞬間に視界を埋め尽くす牡丹雪の存在に気付いた。
…風のない夜の空から落ちてくる、大きな牡丹雪。
「わぁ…」
「わぁ、じゃない」
雪の中のヤンは呆れたような顔で私を見下ろすとポケットから何か白いものを出し、私の手のひらに乗せた。
「これを渡すのを忘れていました。雫の手は冷た過ぎる」
「…手袋?」
「うちのコンビニで扱っている安物で申し訳ないですが」
「え。くれるの?なんで?」
「だから、バレンタインだからだと言ったでしょう」
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