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視界の端を舞った白に、重い雲に覆われた空を見上げた。
自分目掛けて真っ直ぐに降りてくるドットの世界。
風の無い日に降る、こんな雪が好きだ。
不思議と寒さを感じない。
隣を歩く男の気配も消えてなくなる。
まっしろで、とても綺麗。
いつか死ぬとしたら、こんな中がいい。
白一色の世界で、ぽつんと黒色が揺れた。
目を凝らしてジッと見ていると近付いてくるそれは徐々に人の形を成し、やがて私の目の前まで来る。
黒髪に黒スーツ。
黒のロングコート。
まっすぐぶつかった切れ長の目は黒曜石のように綺麗で、視界を染める雪の中で良く映えた。
白以外を綺麗だと思ったのは、それが初めてだった。
思えばあの日から、私の中の何かが彼に捕らわれてしまったのかもしれない。
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