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いつもより、ずっと寒い日だった。
こんなに冷え込む日は暖かいはずの陽射しさえ凍り付いて見える。
両肘に掛けた紙袋の重みのせいもあり、すぐそこの公園から歩いて来ただけだと言うのに剥き出しの指の感覚はとうになくなっていた。
コンビニに入り、暖かいココアをレジに持っていく。
レジで対応した店員は、あの無愛想男だった。
よれたコンビニの制服を着る彼を盗み見る。
黒のスーツを着ていたあの時とは程遠い出で立ちだけど、その黒曜石のような目だけは変わらない。
ネームプレートには『李』とあった。
愛想が無さ過ぎる。アウト。
コンビニでバイトしてる時点でお金持ってなさそう。アウト。
日本人じゃないなら、さらにアウト。
スリーアウトでチェンジ、と心の中で呟いてお釣りを受け取った。
お釣りを貰う時に触れた彼の手はココアより暖かかった。
…この人、本職はなんだろう。
あの晩はかなり良いスーツを着ていたように思うのに、今ではただのフリーターに見える。
興味を持たなかったかと言えば嘘になる。
だけど、私とは相容れないタイプだと思ってしまえば好奇心は萎えた。
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