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この日は晴天だった。
ただ前日に積もった雪が中途半端に溶け、足場はかなり悪い。
私の足音と共にシャーベット状の雪が地雷のように破裂し、歩道に散乱するのを眺めながら歩いている時だった。
「わ、」
突然視界に飛び込んできた男物のスニーカーに身体が強張る。
だけど踏み出した足を止めることは出来ず、私のブーツはスニーカーを目の前にしてシャーベット爆弾を勢い良く踏み抜いた。
「……」
「……」
スニーカーは、あの店員だ。
私はいつの間にかコンビニの駐車場に辿り着いていたらしい。
…そして雪を掻く彼の足を、まんまと濡らしてしまったらしい。
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫です」
彼は無表情のまま、レジ対応の時のように淡々と応えながら自分のポケットを探り、水色のハンカチを取り出した。
「あ、待って」
肩に掛けていた紙袋の封を切ると、ショップでオマケとしてもらったタオルを彼に差し出す。
見せつけるように大きなロゴが入ったタオルに彼は酷く困惑したようだったけど、押し付けてそのまま帰宅した。
タオル一枚の重さなんてたかがしれているけど、急に身軽になった気がした。
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