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「困ります」
次にコンビニを訪れた時、あの店員にそう言われながらコンビニのビニール袋に入ったタオルを突き返された。
どうやら使わなかったらしい。
当たり前か。
オマケとは言え、新品だもの。
相変わらず抑揚のない冷たい声だったけど、この間見た困惑する顔を思い出して内心で笑う。
すると彼が切れ長の目元を柔らかく緩ませた。
「これは大切な人にプレゼントされたものでしょう?あんな風に使われては彼が可哀想です」
…驚いた。
まさかこの男の口からそんな気遣いの言葉が飛び出すなんて。
随分流暢で丁寧な口調に、彼を見かけで判断していた心がゆっくりと溶けてくる。
「特に大切な人って訳じゃないから大丈夫だったのに」
彼が僅かに目を見張る。
そして今日も私の肩に掛かるギフト用の紙袋に一瞬だけ目をやった。
彼がその言葉の意味をどう捉えたのかはわからないけど、特に詮索する事もなく「では」と仕事へ戻っていった。
粉雪が舞うアパートまでの道を歩きながら、彼の声や言葉を思い出してはこれまでとのギャップに口元が緩んだ。
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