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「今日は随分と大荷物ですね」
「うん。パンプス二足ゲットしたんだ」
店内に誰もいない時、私達はこうして話をするようになった。
といっても、短いレジ打ちの時間だけだけど。
日本語がやたらと流暢な彼は中国人留学生で、近くの大学にいるということを知った。
「…いつも思うんですが、それだけ荷物があるのなら家まで送ってもらえばいいんじゃないですか?」
どうやら彼は私が男の車から降りるところを見ていたらしい。
しかも「いつも思う」って事は、いろんな男の車から降りてくる私を見ていると言うことだろう。
「やだ。家を知られたくないもん」
「……」
「じゃあね」
何か言いたげな目を向けられる気がしてさっさとその場を離れた。
きっと真面目な彼には私のような存在は理解出来ないだろう。
でもそれでいいと思った。
私だって違う国に来てまで勉強する彼の事がまるで理解出来ないし。
ただ自分とは違う珍しい生き物に好奇心をくすぐられているんだろう。
彼も、私も。
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