11人が本棚に入れています
本棚に追加
「い、いや、いいよ…遠慮するよ……」
背筋が凍るような悪い予感がしたので、優は直ぐさま遠慮する。
その友達が一体どんなことされたのか、多少は気になるが、自身の方が大切だった。
「まぁ、私が追われている理由はこれで終わりとして……私が空を飛べる理由を話そうか」
先程まで、どこか和やかで愉快であった雰囲気が一変し、真剣な雰囲気に変わっていく。しかし、その表情や雰囲気はどこか悲しそうに見えた。
そんなルナを見て、思わず生唾を飲み、喉が鳴ってしまう。
そして、その雰囲気の中、ただ一言、ルナは告げた。
「飛べるからだ」
「……へぇ?」
もう何度目か解らないくらい、間抜けな声を洩らした。
そして、またしても、さっきまであった真剣な雰囲気が一気に台無しになった。
そして、更に追い打ちをかけるかのように、堂々と胸を張り、声を張り上げ、言い張った。
「飛べるからだ、それ以外に理由はない!」
「え、えっと、ルナ?もしかして…どうして飛べるかルナにもわからないの?」
「あぁ、全く、サッパリ、これっぽっちもわからない!」
さらに胸を張り上げ、言葉を続ける。
「しかし、そんなことは些細な事だ。私は飛べる、だからほら」
ルナはそう告げると同時に、ベッドに座っていたルナの身体が、ゆっくりと浮かび上がり、優はそれに釣られて視線を上げる。
最初にルナを見た光景を思い出した。月夜の光に照らされながら、空を飛んでいるルナの姿を。
あの時は、本当に飛んでいるのかと疑問に思ったが、今、ルナは自分の目の前を飛んでいる。それだけで、さっきまで考えていた事が……空を飛べる理由がどうでもよく感じた。そう、ただ、ただ……!!
「す、すごい!すごいよ!ルナ!」
目の前の光景が純粋に綺麗で、凄くて、感動した。ただ、それだけの気持ちでいっぱいだった。今まで読んできた物語やどんな遊びよりも、心が跳ね上がるようにワクワクした。
優の言葉はルナにとって、予想外だったのか、ルナは驚いた様子を見せる。
だが、優はただ純真に、感動している事を知ると、何かが吹っ切れたのか、その表情は笑みを浮かべた。
「フフ……そうか、凄いか……でも、私一人だけ飛んでいてもつまらないな……そうだ」
最初のコメントを投稿しよう!