第1章 プロローグ

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「い、いや、いいよ…遠慮するよ……」  背筋が凍るような悪い予感がしたので、優は直ぐさま遠慮する。  その友達が一体どんなことされたのか、多少は気になるが、自身の方が大切だった。 「まぁ、私が追われている理由はこれで終わりとして……私が空を飛べる理由を話そうか」  先程まで、どこか和やかで愉快であった雰囲気が一変し、真剣な雰囲気に変わっていく。しかし、その表情や雰囲気はどこか悲しそうに見えた。  そんなルナを見て、思わず生唾を飲み、喉が鳴ってしまう。  そして、その雰囲気の中、ただ一言、ルナは告げた。 「飛べるからだ」 「……へぇ?」  もう何度目か解らないくらい、間抜けな声を洩らした。  そして、またしても、さっきまであった真剣な雰囲気が一気に台無しになった。  そして、更に追い打ちをかけるかのように、堂々と胸を張り、声を張り上げ、言い張った。 「飛べるからだ、それ以外に理由はない!」 「え、えっと、ルナ?もしかして…どうして飛べるかルナにもわからないの?」 「あぁ、全く、サッパリ、これっぽっちもわからない!」  さらに胸を張り上げ、言葉を続ける。 「しかし、そんなことは些細な事だ。私は飛べる、だからほら」  ルナはそう告げると同時に、ベッドに座っていたルナの身体が、ゆっくりと浮かび上がり、優はそれに釣られて視線を上げる。  最初にルナを見た光景を思い出した。月夜の光に照らされながら、空を飛んでいるルナの姿を。  あの時は、本当に飛んでいるのかと疑問に思ったが、今、ルナは自分の目の前を飛んでいる。それだけで、さっきまで考えていた事が……空を飛べる理由がどうでもよく感じた。そう、ただ、ただ……!! 「す、すごい!すごいよ!ルナ!」  目の前の光景が純粋に綺麗で、凄くて、感動した。ただ、それだけの気持ちでいっぱいだった。今まで読んできた物語やどんな遊びよりも、心が跳ね上がるようにワクワクした。  優の言葉はルナにとって、予想外だったのか、ルナは驚いた様子を見せる。  だが、優はただ純真に、感動している事を知ると、何かが吹っ切れたのか、その表情は笑みを浮かべた。 「フフ……そうか、凄いか……でも、私一人だけ飛んでいてもつまらないな……そうだ」  
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