第1章 プロローグ

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最初は検査入院だった。初めての病院、初めての入院だったが母親が一緒に付き添ってくれたから不安はなかった。 検査入院はわずか2日足らずで幕を下ろした。検査結果は日射病と判断された。 優の母親は検査結果を聞き、あれだけの症状が日射病だけで引き起こったことに懐疑的になるが、優の元気の姿を見て、その疑いを心の片隅に残すだけにした。 優が倒れてから2週間後のこと、優は両親と共に病院へと向かっていた。 しかし、途中で渋滞に捕まり、2時間以上車に待ちぼうけになってしまう。 父親は中々進まない渋滞にイラつきを感じ、ハンドルの隅を指で何度も突いており、母親は時計を見て溜息をつく。 優は持ってきていた携帯ゲームで暇を潰すが、さすがに飽きてきたのか、電源を落とそうとしたその時だった。 目に見えていた光景が突然歪み、携帯ゲームを落とすと同時に、優は座席の下へと崩れるように落下した。 母親は優の異常を察し、座席の下に倒れこむ優を抱き抱え、狼狽した声で病院に向かってと叫ぶ。 父親はすぐに病院へと向かおうとするが、渋滞の真っ只中、車は一向に進まず、時間だけが刻々と過ぎていく。 両親は次第に悪化していく状態に居ても経っても居られなくなったのか、車を捨て、優を抱きかかえたまま、病院へと走った。 幸い、その行動が吉に出たのか、優は生死の境目を抜ける事が出来た。 しかし、またこのような事態に合えば命は無いと医師に宣告せれ、優は自宅を離れ、直ぐに対応出来る病院へと住むことになった。 病院の中から出てはいけない。最初はその事に不満を覚えたが、両親は外へ出られない代わりに、病室で出来る様々な楽しい事を教えてくれた。 例えば、テレビゲーム、パズル、お絵かき、模型作り……他にも様々な遊びや事柄を教えては、両親と一緒に楽しく遊んだ。 それが病室の外に出れない優への精一杯の愛情だった。
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