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優が目を覚ました事に気が付いたのか、母さんは僕を力強く抱きしめた。
「ご、ごめんね…ん……私が…お母さんが……ちゃんと健康な状態で産めなくて、ごめんね…ごめん…ね……」母さんは自分を責めるように優へと謝り、涙を流した。
母さんの顔は見えなかったが、今どんな顔をしているのか、6歳の僕でも理解出来た。
それ以来、僕は二度と母さんに、いや、両親に心配をかけないと誓い、外へ出ることはなかった。
しかし、それでも外に出たいと思う気持ちは、自分の中に何時までもあり続けた。
そして、僕に唯一出来ることは、それは、自分の部屋のベランダから外の世界を‘見る‘ことだけだった。
「ハァハァ……っ……熱っい…風に…風にあたりたい」
優は熱と苦しみで疲労しきっている身体に力を入れ、ベッドから出て、おぼつかない足取りで、一歩一歩進み、部屋の北側にあるベランダへと向かう。
スライドドアを開け、外へと出ると、熱で魘された身体を冷やすように、心地よい風が吹きつけた。
優は少し歩き、ベランダを囲っている柵に腕を置き、もたれかかり、ゆっくりと目を閉じた。
「気持ちぃ……」
さっきまであった熱や目眩、吐き気などが少し和らいでいくかのように、少しずつ体調が良くなる気がした。
優は目をゆっくりと開け、視線を上げた。空は真っ暗な闇に染まっているが、幾万の無数の星、そして、一つの月がその闇を照らすかのように輝いていた。
僕は夜の星空と月が大好きだ。病気で苦しい時や嫌な時があった時は、決まってベランダに出て、夜空を眺める。
けど、今日の星空は息をするのを忘れてしまうくらい、まるで、今だけ時間が止まったかのように、今、眺めている光景に目を奪われていた。
月に、一人の少女が……白銀の月の光に照らされた銀髪の少女が空を浮かんでいた。
その光景があまりにも美しすぎて、綺麗で、思わず息を飲んだ。
優はその少女に見惚れてしまったかのように、少女から視線が外れなかった。
さっきまであった吐き気や熱は、忘れてしまったかのように一瞬で消し飛んだ。そして、なぜか少女と話したいと思った……だから
「ねぇ、君!……何してるの!?」
優は少女に聞こえてと願うかのように、大声で叫んだ。
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