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部屋に侵入してきたことに罪悪感があるのか、少女はそう申し込んできた。
「え……と…その……」
優は少女のその申し出に口ごもる。
正直、少女の言葉に頭がついていかず、なんと返事をすれば良いかわからない。
けど、ふと、あるお願い、いや、願望が脳裏を過るが、少女がそれを叶えてくれるか分からなかった為か、自信のなさそうな声音で訊いた。
「お、お礼……お礼ってなんでもいいの?」
「あぁ、私に出来る事ならなんでもかまわないが」少女の言葉が一瞬止まる。
優はその事に首を傾げ、少女へと集中した視線を向けると、何故か、少女は顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうにしていた。
そして、少女は言葉の続きを口にした。
「そ、その……え、えっちなことはダメだぞ!!」
優はその言葉を聞いた瞬間、少女の恥ずかしさが伝染したかのように顔を赤らめた。
「そ、そんなことしないよ!」優は直ぐに否定し、言葉を続けた。
「僕は……僕は、ただ君と……君とお話がしたいんだ!」
一度でいい、家族と担当医以外の人と話したい……その気持ちで、心がいっぱいだった。
そして、その願い事の内容に、思わず興を突かれてしまったのか、少女は申し訳なさと驚愕が混じったような表情で、「そんな事でいいのか……?もっと、もっと何かないのか……!?例えば……そう、例えば……」
「僕は、君とお話がしたいんだ!……だから……こほこほ……ツぅ――――はぁはぁ…」急に大声で話した所為か、先程まで収まっていた熱や吐き気、咳などが一気に襲いかかり、優を苦しめた。
優はその苦しみを我慢するかのように、その場で蹲る。
けど、苦しみは強くなる一方だった。
目の前の少年が急に苦しそうになった所為か、少女は驚愕と心配の混ざったような声音で「お、おい!…君!大丈夫か!?」と蹲っている優の元まで駆け寄り、背中に手を置き、ゆっくりと擦る。
吐き気などはしばらく続いたが、少女が一時も手を止めずに背中を擦ってくれたお陰か、次第に吐き気などは和らぎ、なんとか話せる状態になった。
「も、もう大丈夫だよ……ありがとう」優の言葉を聞き、少女は手を止め、こちらを心配そうに見た。
「ほんとうに大丈夫なのか?……すまない……体調の悪い日に押し掛けてしまって……」
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