11人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は申し訳なさそうに視線と声のトーンを低くした。優は彼女の様子を見て、自分が彼女が心配させてしまったと思い、慌てて答えた。
「き、気にしないで!体調が悪いのは、いつものことなんだ。その、僕……生まれた頃から病気で……いつもこんなことばかりだから…だ、大丈夫だよ」
優は苦しさを誤魔化すように笑うが、その言葉に少女は、「違う!……それは違うだろ……大丈夫なはずがない!」と突然声を張り上げ言った。
「君はこんなに苦しそうじゃないか。そんな嘘をつかなくていい」
少女は心配と優しさが混じったような声音、そう、まるで母親のように叱責する。
「う、嘘じゃないよ!……病気は本当に生まれた頃からだし……」
「違う、その事ではない。病気に慣れているって言ったことだ。慣れている人間がそんな顔をするか……君は、私を心配させたくなかったから、だから、そんな嘘をついたんだろう……」
優は彼女の言葉に戸惑いと悲しみの表情を浮かべた。彼女の言葉は少し図星だった。確かに、少女を心配させたくなかった気持ちもあった。……しかし、一番の理由は病気の事で哀れんで欲しくなかった。
心配をされてしまうと、その人と対等に話せなくなるから……病気の事を気にしながら、喋ってほしくなかった。
どこまでも対等に、病気の事など一切関係なく、そう、まるで友人同士が話すような感覚のようにお喋りしたかった。
けど、その嘘は彼女に見抜かれてしまった。もう、二度と……彼女は対等に話してくれない。優は顔を隠すように俯いた。今にも涙が溢れそうだった。
「何しょげた顔つきをしている。君は、私と話をするのではなかったのか?」
優は少女の言葉に「えっ!?」と驚愕の声を上げると同時に視線を上げた。
「もう大丈夫なんだろ?なら、色々話そう。まだ夜は長いぞ」
彼女は微笑み、自身の髪を靡かせながら優のベッドへと座った。
「で、でも僕……病気だし……」
「ん、そんな事関係ない……君が病気だろうがなかろうが、私と話すのに何の問題もない。さぁ、話そう。まだ夜は長い」
優は少女の言葉を聞いた瞬間、さっきまで我慢していた感情が、涙が一気に爆発し、頬に流れ落ちた。
「ん、……うっ、グス……んっ」
涙を流し、鼻を噛む。
しかし、この涙は悲しい感情からではなく、嬉しい感情から来る涙であった。
最初のコメントを投稿しよう!