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「壮介、結婚おめでとう。」
今私は、家族と共に兄、壮介の結婚報告を受けている。
「父さん、母さんありがとう。」
兄も、その横にちょこんと座る恵美さんも凄く幸せそうで、いつもの我が家のリビングがほんわか温かく感じるのは、きっと私だけじゃないはず…
なんて、呑気にコーヒーカップを手に取った時だった…
「桃花、就職決まったんだって?」
幸せ一杯の笑みでお兄ちゃんが私を見ていた。
私は飲もうと思っていたコーヒーカップをお皿に戻した。
「うん。3社受けてようやく決まったんだ~」
そう言いながら、少し照れ臭くて、お兄ちゃんから目線を外した。
うちは私とお兄ちゃんの他に、世界中飛び回ってる自称カメラマンの兄がもう一人いる。それが大智。7つも年が離れている兄とは、ここ3年お会いしていないが、多分元気にしていることだろう…
私は何故か昔から大智をお兄ちゃんと呼んだ事がない。
私にとってお兄ちゃんと呼べる存在は壮介だけ。
小さい頃からお兄ちゃんは本当に優しくて、私が泣いていればいつも頭を撫でてくれるような兄だった。
「なぁ、桃花…」
ちょっと小さくなったお兄ちゃんの声に、ふと目線を戻した
「お前も無事大学卒業して、就職も出来た。」
さっきのは気のせいだったのか、お兄ちゃんは声を張っている…
「アニキはあんなんだから、この家は、俺が継ごうと思うんだ」
何処か誇らしそうに語りだして、恵美さんを囲んでいた両親も話を止めてこちらに注目し始めた。
「お兄ちゃんが良いなら、私は賛成だよ?大智は当てにならないしね!」
お兄ちゃんがここに居てくれるなら、何の不安もないし、
「私もいつか結婚したら、この家出ちゃうと思うし...」
そのいつかは、いつ訪れるのかな…
「まぁ、今の所結婚以前に、彼氏もいないし?しばらくは一緒にー」
ニコニコしていたお兄ちゃんの表情が少し…いや、結構雲って来ていて…私は喋るのを止めた
「桃花…この家に俺の部屋ってあったっけ?」
あれ…
なんか…
難しいなぞなぞ出されてる気分
ん~
「二階には一応、二部屋あって...まぁ、一つは私が使ってるけど、もう一つは…」
何となく察して来た...
「お前…もう一つも使ってるよな?」
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