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 ぱしゅっ、というあまりにか細い音と共に射出された弾丸は、大きな衝突音の刹那に激しく彼の脳内で暴れてくれた。彼の頭が水風船の様にバウンドして、全てが終わった。即昇華性蒸気銃(ハイスチームガン)は高価だが、暗殺に適する。 「……地獄に堕ちろ」  わしは小さく言葉を吐き捨てると、足早に部屋を出て、何事も無かったかの様に去った。 (卑しい幸せに満たされて死ぬのも有る意味間抜けなもんだ)  ふとそんなことを思って、嗤った。  わしの権力者への我執と怨恨は、暗殺に都合の良い行動を行うために、自身の感情に対して屁理屈に近い理屈を重ねることで誤魔化されている。そうでもして冷静にならなければ、わしは必ず激情に支配された行動を強行し、文字通りの無謀を働いて死ぬからだ。  わしは下記のように自分を誤魔化す。  復讐心───苦い思い出の中で決して喪われる事のない、何より自分の中にしか存在しない、殺意に変わるべくして存在する強力な憎しみの劫火……その根源を国の権力者の内側にあるものとみなすのだ。彼らが自分達を軽蔑しているから、自分達も彼らを恨むのだと、場合に応じて自分に嘘をつき信じ込む。そして自身を、権力者の中の蔑みの心を鎮火することができない弱者の立場の枠から外さないことで、心を落ち着ける。これは、運命であると。  その心理状態で、殺しに徹する。  つまるところ、復讐者ではなく殺し屋の時のわしは貧富を『当然の運命』と考えることで、彼らがわしら貧困層に行った罪を一時的に赦し、殺しという仕事を復讐のカテゴリの枠から外していたのだ。もちろん、そうやって自分に嘘を付くことが嫌になることはある。しかし、わしのような復讐者の憎しみの下では、その嫌悪は一匹の蚊に対するものに等しいのだった。
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