1.妖精の指輪

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「面白いもの?」  知り合いがバイトしてる姿を見れたことか?  いや、でも陽菜は何度もこの店に来てるし……  俺が着替えてる最中に何かあったのかね? 「ええ。  さて、あなたのバイトも終わったようだし、事務所に行くわよ」 「はいよ」  サファイアのような澄んだ蒼い瞳をこちらに向け、彼女は席を立つ。  小説を鞄へしまい、出口へと向かった。  俺はもう一度カウンターの店長に軽く頭を下げ、陽菜を追いかける。  バイトで疲れてるのに何をやらされるんだか……  これから起こる事態を想像し、店を出て彼女の横に並んだ所で溜め息がもれた。  ちなみにもう20時過ぎのため、外は闇に包まれている。 「……疲れてるの?」 「ん、まぁ、少しだけな。  慣れてるから平気平気」  余計な心配をさせてしまったようだ。  ちょっとタイミング悪かったな。 「あ、でもコンビニだけ寄らしてくれないか?  腹減っちゃって」 「そう思って、お弁当作ってきてるわよ」 「おっ、マジで?」 「ええ。  時間あったからね」 「ありがと。  陽菜の料理は美味いから楽しみだわ」 「べ、別に私の分のついでだったから」  照れてる照れてる。  暗いけど街灯のおかげで、少し顔が紅くなってるのがわかる。
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