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同じようなことを考えていたらしい小坂が、
通路の奥から聞こえる怒号に顔を引きつらせながら呟いた。
「……つーか、すげーな。
やっぱ、混乱してますね、だいぶ」
「それはそうですよ。
皆さんにとっては、
寝耳に水のオンパレードですから」
怒号が聞こえた通路の曲がり角からやってきたのは、
この場に似合わぬ笑顔で冷静さを保つ石川だった。
「あ、おはようございます」
「おはようございます。
本日は色々と、よろしくお願い致しますね」
「……色々と……。
まぁ、はい。ガンバリマス」
石川の笑顔とは対照的に、小坂の肩は段々と落ちていく。
苦笑いの度合いが深くなっていくけれど。
そこで、鞠弥は気が付いた。
この人の落ち着きぶりも、
この場ではたぶん、異常なのだと。
「突如失踪した専務が、
黒い噂の絶えない大企業の最高責任者になって、
乗り込んでくる訳ですからね。
役員の皆さまは、
それはそれは驚愕して、激昂して、
戦々恐々とされていますよ」
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