58/60
1137人が本棚に入れています
本棚に追加
/457ページ
ずっと。 ずっと、言えずにいた一言だった。 だけど、今、なんだ。 言葉にすべきは、声に出すべきは今なんだ。 「……頼む」 自分にどうしようもないのなら、誰かの力を頼るしかない。 今までだって、世話になってきたはずなのに。 『助けて』 この言葉だけは、素直に言えずにいた。 最後のプライド? 「……バーカ」 いや、違う。 知っていたからだ。 「当たり前だろうが」 勝に頼るということは。 今まで見て見ぬふりしてきた全てのことと、向き合わなければならないということだから。 「……15年だ」 竜也は、それが怖かったのだ。 だからこそ、ずっと言えなかった。 「その言葉……。  15年、待ってたっつーの」
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!