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知っていた。
分かっていたんだ。
この情に篤い男が、どれだけ歯痒い思いで自分を見守ってきたのか。
気付いていたのに、目を背けた。
自分の過去と、育ちと。
何より父親という存在と、向き合う勇気がなかったから。
「覚悟しろよ」
そうだ。
自分に足りなかったのは、恐らくそういったものなのだ。
「やるからには徹底的に。
完膚無きまでに叩きのめすからな」
爽やかな笑顔で。
とんでもないことをサラッと宣言する勝の姿は、何度見ても笑みが零れる。
「大丈夫さ」
根拠など何もないのに、信じられる。
「お前は一人じゃないから。……な?」
「はい。ずっとずっと、一緒に居ます」
「……ありがとう」
少しだけ頬を染めて、鞠弥は真摯な瞳を向けてくれる。
竜也は単純な男だから、それだけでなんとかなりそうな気がしてしまう。
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