悪夢の始まりの始まり

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2045年の真夏、蒸し暑い教室の中で俺は一人で補習を受けていた。 俺は超難関大学へと進学希望しているため、高校2年から誰もやりたがらない週5回もある補習授業に参加しているのだ。 「では、今日はここまで。この続きはまた今度だ。お疲れ、くらげ」 「ありがとうございました」 補習授業を持ってくれた先生は怠そうに教室から出て行く。 「さて、俺もいくか」 俺の名前は海月 悠斗(かいげつ ゆうと)。しかし、みんなは俺を苗字が「海月」ということからくらげと呼ぶせいで先生までそう呼ぶようになった。 どうでもいいのだが。 そんなことを思いながら校舎を後にしようとして足を踏み出すと、太陽が容赦なく照りつけているせいで目が眩む。 軽く眩んだ目が外の光へ慣れた頃、俺の目の前はたくさんのビルと人で溢れかえっていた。 俺の住んでる街は日本一を争えるほどに近代化が進んでいる。 2030年頃から情報技術の発展速度が急激に上がっていった。 例えば、個人端末の完成。 個人端末というのは、俺が小学生くらいの時に完成した仮想空間の技術を使った仮想パネルのことである。 今は電話やインターネットしかできない。しかし、1cmくらいのメモリカードを体のどこかに埋め込むと、それだけで使えるため、全世界で装着義務が課されているのだ。 それがあればGPS機能も付いているため犯罪が起きても逃げる事はできない。 勿論カードのある所を切り取るなりすれば外すことはできるがどこへ埋め込まれるか分からないためそんな事をする人は居ない。 そういった事からこの街を中心に色々な情報会社のメーカーが今しかない、というように躍起になって仕事に励んでいるらしい。 そのためこんな長方形の建物ばっかになってしまったのだ。 そんなことを考えながら、飽きるほど見たこの景色、蒸し暑い人混みの中を一人歩き続けた。 しばらく歩いていると、いつものゲームショップが見えてきた。この角を曲がると住宅街へと着く。この先が俺の家だ。 しかし、いい加減暑くてしょうが無いので足取りも自然と重くなる。 俺は家までもう少し、と自分の足に鞭を打ち一歩一歩足を踏み出していく。
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