僕と彼女と

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空には雲一つ見えなかった。 とても綺麗な夕焼けで、 桜の花びらも朱色に 染まっているように見える。 「………」 黒いブックカバーを被せている 本に目を通しながら、僕は 病院へと向かっていた。 僕は、学園の後には、 毎日病院へと行っている。 いや、行かなくちゃいけない。 僕のお母さんは数年前に肺がんが 見つかり、入院している。 肺がんは早期発見が難しい。 お母さんも早期発見ができず、 治療を受けながらも、肺がんと 奮闘している。 僕はそれを応援していた。 「………」 案外、学校と病院は近く、 あっさりと着いてしまった。 もう老朽化が進んでいて、 木で建築された小さい病院。 でも高さはそれなりにあって、 病室も多い。 僕は中に入って、受付の 人に声をかけた。 「あぁ、優太君か。 また今日もお母さんのお見舞い? 偉いねぇ…」 「そうでもないですよ…」 受付のお婆さんに軽い会釈をして、 お母さんの病室に向かった。 そして、一つの扉の前で 僕は立ち止まった 『乾涼子(イヌイ リョウコ)』 僕のお母さんの名前で、 ここの病室に入院している。 僕はノックした。 「どうぞ」 お母さんの声で、僕は 扉を開けて、病室に入った。 「…あら、優太? 今日も来てくれたの?」 「当然だよ。 今日は調子、大丈夫なの?」 「…普通かな?」
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