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わたしはあの夢の中で、小さな夏希に向かってそうしたように、彼女の背後から声をかけた。
「夏希……」
その声に一瞬、彼女の肩が小さく揺れた。
ゆっくりと振り向いた彼女の顔は、夢の中のそれとは違っていた。
優しく、微笑んでいた……
それから彼女は、わたしを見つめたまま静かに言った。
「おかえり」
その瞬間、わたしの目から涙があふれた。
たくさんの涙が頬をつたって、床に落ちた。
わたしは、声をあげて泣いた。
まるで子供みたいに大きな声で、流れる涙を拭うことさえせずに泣いていた。
嬉しかったの……
こうしてまた、あなたに会えたことが。
そこに立ったままいつまでも泣き続けるわたしを、夏希はただ、優しい目で見つめていた。
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