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これから俺は俺を産んでくれた人のお墓に行くんだ。
話を聞く限りじゃ芯の強い母親だったらしい。
俺は母さんに似てるのかもしれない。
「夏希に会うのは久しぶりだね琴音」
「そうね。楽しみだわ」
親父は今でも母さんのことを想ってるみたいだった。
それでも親父とお袋の間には強い絆がある。
愛とは違った絆で2人は結ばれているみたいだ。
「お客さん。着きましたよ」
「ありがとうございました」
タクシーから降りると緑の匂いが俺の鼻いっぱいに広がってくる。
すごい緑が綺麗な場所だ。
「ここにあるんだ?母さんのお墓が」
「うん。こっちだよ」
親父について歩いていくと一本道に入っていった。
左右は緑に囲まれ、風が吹くたび草木が揺れて心地いい。
「涼。見えてきたわよ」
お袋が指指す方にはいくつかのお墓が並んでいた。
周りは綺麗な花に囲まれていて、穏やかな空気が流れている。
いくつかのお墓を通り過ぎると綺麗に整備されたお墓の前で立ち止まった。
「涼。ここが夏希のお墓だよ」
大きなお墓には"宮野夏希"という名前が彫られていた。
これが母さんのお墓か……。
初めて来た、ここに。
「親父、お袋。ちょっとだけ2人にしてくれる?」
「分かった。あっち行ってるから、あとで呼べよ」
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