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だけどそんなことに2人は見向きもしないで、ケーキのショーウインドーを覗き込んでる。
ほんと、何も考えてないんだから。
「あれ…」
ふと視線を向けると、お茶をしている女の子たちの中に見慣れた髪色を見つけた。
風になびくあの色の髪は……。
「…雪菜」
あの優しい栗色の髪は間違いなくあたしの親友、雪菜のものだ。
偶然だな、こんな場所で雪菜に会うなんて。
声をかけようと1歩足を踏み出すが、一緒にいる人を見てあたしはその足を止める。
どうして、あの人と雪菜が一緒にいるの?
見間違えるはずなんてない、あたしが、あの人のことを。
どうして雪菜が彼と一緒にいるの?
「……なんで千尋と…」
雪菜と一緒にいるのは間違いなく千尋だった。
あの髪色と耳に輝く勾玉のピアスは間違いなく千尋のものだ。
「どうかしたか?」
「あ、うん……」
あたしはもう1度雪菜たちに視線を向ける。
「あそこにいるの、雪菜なんだけど、一緒にいるのが千尋だと思うの」
「千尋さんが?なんで桜井と一緒なんだ?」
「分かんない……」
湊くんもあたしの視線の先を見つめると、確かに不思議そうな顔をした。
あの2人の組み合わせに共通点が見つからず、あたしたちの頭にはハテナが広がる。
「どうかしたのー?2人とも」
「あれ、見てみろ」
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