バスケットボール

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寒さも、痛さも、辛さも、悲しさも、飢えもない、ただ、そこにいて漂うだの存在が幽霊だ。時々、生きている人間を恨んでいる奴も居るけれど、時間がたてば擦り切れて忘れていく。永遠ともとれる時間は私からさまざまなものを落とすのだ。ヘンゼルとグレーテルがパン屑を落として行っても食われてなくなるように、生きていた頃の名残を無くしていく。中にはそんな自分を受け入れられずに成仏?かもしれないが、ひとりでに消えていく奴もいる。 長々と語るつもりはないが、よーする人間にいろいろあるように、幽霊にだっていろいろあるとということだが、言えることは皆、幽霊は暇人だ。なにせ、死人なものだからやることは漂うだけで、特にやることがない、眠ることはできてもただ目を閉じているだけに近い、最近、見かけた幽霊に大声で歌い続ける奴がいたけれど、同じ幽霊、数人にやかましいと暴行を受けていた。現実の人間や物に触れることはできなくても同じ幽霊同士なら触れ合うこともできる。当然、殴り合うこともだ。 おかしな話かもしれないけれど、これが幽霊だ。まぁ、下手くそな歌を永遠、聞かされたくはないよな。うんと頷きつつバスケットコートのほうに目をやるとまだ、やっていた。向こうには私達の存在は見えていないので、一人で練習中、こちらから見ていることに気がついてはいない。 空に浮かぶ雲がそこにあるとわかっていてもほとんどの人間はそれを気にしない、幽霊もまた同じそこにいるのに、そこにいない。認知されない。幽霊は何かをし続けるという行為ができない、死んでいるため物体に干渉ができないし、途中で飽きてしまうからなのかもしれない、彼の無駄とも言える行為に興味があった。いつまで続くか、いつまで続けるのか、単なる暇つぶしだ。それ以外に意味はない。 「まぁとはいってもこれももうすぐ終わるようだけどね」 「あん? どういう意味だ?」 「簡単に言うとバスケ部の彼が、この体育館を私物化してるって言う人達がいるんだよね」 「否定は、できねぇよな。これじゃ」 私物化してると言われればそれまでだ。 「けど、今まで放置してあったんだろ。あいつがバスケ部だってんなら部活してるでいいじゃねーのか?」 「その私物化してるって言ってる連中ガこの体育館を使いたいって言ってるとしたら?」 教師らしく、相手に考えさせるような言い方に少し苛立ちはするが、グダグダ考えても無駄だ。
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