バスケットボール

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ゴールネットをボールが揺らす、彼が振り返りざまに勝利と言わんばかりに人差し指を立てる前に、私は走り出していた。ゴールをくぐり抜けたボールを拾い上げてドリブルする。 1オン1をしようと無言の表現、彼も驚いたようだけれど、すぐに答えてくれた。さっきはディフェンスだったけれど、今はオフェンス、不慣れな身体に血が流れていく、それが擬似的な感覚だったとしても、構わなかった。 ボールが手についてくる。一点だけではなく全体を見渡して、どうすれば彼を抜けるか、思案する。ドリブルで突き抜けるのは難しいなら、私は真上、彼の頭上にボールを放り、彼の視線が真上に向く瞬間を見逃さず、彼の股の間にボールを放り、通り抜けたところをさっと奪いドリブルする。 ほとんど一か八かというか、プレイヤーとして反則かもしれない技をやってしまったが、成功したと喜びを噛み締めながら走り、シュートが、勝利の女神様がいるのなら私の行為はそっぽ向かれたらしく無情にも弾かれてしまうが、ほうけたりしない、弾かれたボールを拾うために走り出す。 彼もそれは同じだったのだろう。いち早くボールに追いつくとキャッチする。攻守が交代、ダムダムとドリブルが繰り返され、彼も私と同じように真上にボールをシュートする仕草をした。同じ手に引っかかるかと思う気持ちを彼は利用した。投げた真上にシュートした。真下やドリブルの切り崩しを警戒していた私はアホのように真上を眺めてしまう、その瞬間、彼が真横を通り抜けてボールをつかみ流れるような動作でシュートした。ゴールネットを揺らす。 汗が流れて、私達はくたくたになるまで1オン1を繰り返した。勝敗としては彼が勝ち越している。さすが経験者、かなうものか。 「ハァッ……ハァッ……見知らぬ誰かさん、なかなかやるね。久しぶりに熱くなったな」 「うっせーこの体力バカ、こっちはほとんど初心者なんだぞ。手加減しろよ。チクショーが、あとな私は見知らぬ誰かさんじゃねーよ。つーか長い」 「いや。名前、知らないしさ、いきなり1オン1をやってくるから経験者だと思ったんだよ。初心者かー、まぁ、プレイが雑というか、トリッキーさは認めるけどね。股抜けはさすがにビビったね。やられたの初めてだったし。俺は菱神雄馬(ひしがみ、ゆうま)」 「あんなの運任せだ。一回だけだ」 唐突な自己紹介に私は言う。 「梓、梓由佳里(あずさ、ゆかり)」
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