第三章一話

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 訊ねた出雲に、蓮也は「……判らない」と言った。 「実感が、無いんです……。俺が物心ついた時には、両親はいなかったから……。  俺は、姉さんに育てられた……。姉しか、家族として見られない……。だから、貴方が憎いかどうか、俺には判らない……」    だけど、と蓮也は呟く。 「姉は……おそらく円は違う。彼女は、貴方を――教会を許さない。  眼前で、両親を殺された姉の絶望が、憎しみとなって、俺の内側で渦巻いているのがわかる。  憎しみ、怒り、苦しみ、悲しみ……、ありとあらゆる〝負〟の感情が、円の糧となっている……。  その〝負の感情〟の矛先は、もう教会や出雲さんだけじゃない。無差別に向けられている。このままじゃ俺は――いや、姉は殺人鬼に成り果てるんじゃないのかって、俺は思うんだ……」    蓮也の絶望に、出雲は「だが、まだ希望はある」と言った。    訝しむ蓮也に、出雲は告げる。 「円城円には、『円城蓮也』という存在がいる。  これは僥倖だ。  彼女は〝家族〟というコミュニティに依存している。かつて家族を奪われた事によって、彼女は家族を失うのを、ひどく怖れている。 『円城蓮也』という弟が――繋がりがなければ、彼女はとっくのとうに殺人鬼に成り果てている。  だが、君はまだここにいる」
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