0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
――遠い夢をみた。
俺と円、琥珀の三人がまだ一緒にいた日の事。
俺は親から教わった剣技を円の前で披露していた。
円は怒り、俺から剣技の使用を禁じた。
両親から異端狩りの技術を習っていたのを、円は知らなかったらしい。
『蓮也はこんな危ない事をしなくていいの』
後にも先にも円が怒ったのは、この一件だけだった。
俺は円が嫌うという理由だけで、剣を捨てた。
そういえば、俺は、なんで子供の頃の記憶を失っているのだろう。
夢の中ではこんなに鮮明に憶えているというのに……。
あの時、俺がしっかりしていれば姉さんを救えたのに……。
円……。
俺は姉さんを救えなかったよ――
「う……」
眩い陽光の日差しに、蓮也は思わず呻いた。
「起きたかい?」
声のする方を向くと、大神出雲が椅子に座っていた。
彼の顔を捉えた瞬間、蓮也はハッと意識が鮮明になる。
「出雲さんッ! 竜二はッ!? あいつは、いまどうしてるんですかっ!?」
「落ちつけ蓮也君」
掴みかかる蓮也を、出雲はなだめる。
最初のコメントを投稿しよう!