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「まあ、でも、安心して下さい。もしも脱出出来た者が現れて、寄生生物が死滅した事を確認出来た暁には、君達は普通の生活に戻れる約束になっています。当面の間、定期検診等の制限や監視は行われると思いますけどね」
そう言って手をひらひらと振る浅倉を前に、僕は僅かに警戒心を滲ませる。
「……信じても、いいんですか」
「この実験は、元より治療法……いや、厳密には、『寄生生物を死滅させる方法』を確立する事が本来の目的です。また何時同じ寄生生物を宿した隕石が飛来するとも限らないですからねぇ。君達がそれを果たしたとするなら、蔑ろに等出来る筈も無い。寧ろ讃えられるべき功績です」
偉業を為し遂げたと言われれば、確かにそうなのだろう。僕達は50時間の戦いに勝利し、生を勝ち取ったのだから。
だが、それでも僕は、いや、恐らくは叶と舞華も、幾つもの苦難や困難を乗り越えたというのに、『達成感』というものを微塵も感じてはいなかった。
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