始まりの章

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小さな顔に付いている可愛い口を、ポカンと開けた夏樹が 鳶色の瞳を細め、満足そうに微笑む冬樹の横で無邪気に笑う 「うわー、凄い!冬樹より大きい人がいっぱい居る」 夏樹ってば、めちゃくちゃ可愛い 興奮して目をキラキラさせ、転がってきたバスケットボールを両手で抱き締める夏樹を 満面の笑みで見守り 「俺はバスケ選手としては、小柄だからね。あ、勇先輩。昨日お願いした夏樹です」 うっとりと冬樹を見詰める勇に、肩を竦め声を掛けた もう・・・・・・ 美しく凄艶な顔を輝かせる冬樹に見惚れていた勇が、蠱惑的な唇を尖らせる冬樹に気付き 慌てて、ボヤッとした印象の少年へと視線を移し、目を見開いた 「想像以上に小さいな。ボールに腰が隠れてるじゃねぇか」 小さな手でボールを抱き締める少年は、妖しい色香を放つ冬樹が傍に居なければ うっかり見落としそうなほど、存在感がない 「晃平とも話して決めたが、一年VS二年で試合をして貰う。俺と晃平は抜けるが、大成は残す。しっかりやれ」 ゲ!マジッすか 負けたくねえのに、ヤバくね? 「大成さん残すのは、狡くないですか」 「狡くねえよ。大成外したら二年が不利だろ?一年にはお前らが居るんだからな」 確かに、冬樹と翔太が居て負ける筈がない 翔太の姿は・・・・・・? アイツは、また遅刻か 「ウィッす。ご期待に応えて、俺が大成さんを抑えて見せますよ」 「お、チビちゃん遊びに来たのか。こりゃあ、ポカリよりジュースのが良かったな」 ビクッと、小さな身体が震えたのを見て晃平さんが苦笑してる まあ、夏樹にしてみたら、この人の声のデカさは怪獣だよね 「夏樹、この人が部長さんで、こっちの人が藤林さん。夏樹が一緒に居ても大丈夫な人たち亅 「本当・・・・・・? 本当に一緒に居てくれるの」 頬を紅潮させて、目を潤ませて見上げてくる夏樹に頷いて見せた ・・・・・・良かった。連れて来て 冬樹の隣へとさり気なく立ち、優美な線を描く腰へと手を置き下へと移動させていく 柔らかな丘で掌をくるくる回しながら 冬樹の耳へ端正な顔を近付け 「約束は守れよ、冬樹。おチビちゃんが居ねえ時にでもな」 狂暴な欲望を含んだ声で、囁いた 僅かに顎をあげ、色っぽく唇を震わせた冬樹を見て、離れていく 「良し!隅に行ってボール磨いて貰おうか」
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