第1章

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 早速見学に行くと、なかなかいいじゃない! これはいい。外観は古ぼけてていま一つだけど、とにかく部屋が広い!  設備は古めだけど、日当たりも真南向きで最高。  あたしたちは見学したその日に、その賃貸物件が気に入り契約する事にした。  引越しも済んで早速そこで生活をする事になり、半月程経ったころ、堅人が妙な事を言い出した。 「新しい物件に住む前に、あれをやっておけばよかったなぁ」 「あれ?」 「そう、新しく住む部屋を覚えて、目を閉じて、家の場所を思い出しながら頭の中で一通り歩いてみるんだ。で、どこにも何もいなかったら、そこには霊はいないってこと。でも、もし何かが見えたら……」  あたしは一瞬ドキリとした。 「嫌だー変なこと言わないでよ! 堅人、怖くなるじゃない」 「大丈夫、大丈夫、やるだけやってみようよ」  堅人は冗談交じりに笑う。  あたしは半月暮らした覚えたての部屋のあちこちを、目を閉じ、頭の中で思い出しながら歩いてみる事にした。  まず奥の部屋から。  リビング。一番日差しがあたるところだわ。清々しい。  新しい家具やキッチンのテーブル、食器棚なんかが並んでいて、とても綺麗。  次に和室、ここも日が当たるから特に何もなし。気持がいいくらいね。  次は寝室。窓がない部屋だけど、ふすま隔てて隣。ちょっと暗いけど、その分安眠できそう。問題ないわ。  さて、次はお風呂。じめじめしている。この辺りからなんだかあたしは心臓がドキドキしてきた。  少しだけいやーな予感がする。  何もいないわね。  次はトイレ!  うーん、お気に入りのクローバーの柄の緑色のお揃いのセット、水の流れもよし! 問題なし。  で、最後に玄関と、北の部屋なんだけど……。  私は頭の中で、真っ暗な玄関には特に何も見当たらないと確認すると、その横の部屋の入り口に立った。  やっぱり嫌な予感はここからだ。  何かがいるような気がしてたまらない……。  喜んで入居したものの、二人暮らしで3LDKはやっぱり広い。  だから北の部屋は倉庫として使っていて、普段は全く誰も入らない部屋になった。
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