54人が本棚に入れています
本棚に追加
「頭を上げて下さいっ……」
それでも頭を下げたまま
振り絞るように悠月さんは言った。
「誰も傷つけたくねえんだ」
「え?」
「ファンもメンバーも……誰も傷つけたくない。もちろんおまえもだ」
一見してクールな外見とは裏腹。
優しさを湛えた深い瞳。
「悠月さん……」
「結局、俺の我儘なんだよ。今日はデビュー後初のファンミーティングなんだ。昨夜の件が警察に知れたら、それこそ取りやめになっちまう。俺のためだけに一生懸命準備したメンバーやスタッフの苦労を無にしたくないし、待っててくれたファンの期待を裏切りたくない。だけど――」
珈琲牛乳にストローを挿す
悠月さんの指先が
「……っ!」
次の瞬間
そっと僕の頬を撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!