第5話

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「……」 『父親とゴルフ』ということはつまり、『神崎グループを束ねる社長とゴルフ』ということ。 そう言われたら、さすがの佐藤くんだって無理に引き止めるわけにはいかない。 いい言い訳を見つけたもんだ。 とは思ったものの、それを口にすることはせず 「忘年会やった店。なかなか良かったけど、俺もフグ食べたかったな」 「……」 右にハンドルを切りながら呟く、彼の嫌味なひとり言を無視した。 「行こうか。今度」 「待ち伏せなんて二度としない。って誓うなら」 サラリと口にした誘いの言葉。助手席側の窓に視線を移しながら上手くかわして彼の手を封じる。 「そっか。じゃあ無理だね」 「……」 『開いた口が塞がらない』とは、まさにこのことだと実感した瞬間だった。
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