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それから、車はようやくグランド沿いの道を終え、ゆっくりと校門をくぐった。
広い敷地内へ入っていくと、大きくて真新しい校舎に目を奪われた。あえて、一部の建物は煉瓦作りとなっていて、かわいらしい。その上部は三角屋根の時計台となっている。
さらに車が進んで驚いたのは、同じような送迎車が数多くいたことだ。ここはただの私立ではなく、正真正銘のお金持ち学校に違いないと思った。多額の寄付が、あの多くのグランドの維持費となるのだろう。
「ここでお待ちいただけますか。すぐ参りますので」
車寄せでおろしてもらい、森野さんは駐車しに車を走らせていったので、入り口の脇のベンチにひとまず座った。
かわいい制服を着た、かわいい子たちが何人か同じように車から降りて校舎の中に入っていく。お金持ちなのは一目でわかったが、みんな澄ました感じはなく、はつらつとした様子だ。自由な校風、というものが生徒にも浸透しているようだ。
同級生はどんな子たちだろう。早く仲良くなりたいな。
そんなことを思っていると、次に来た車は男子を降ろしていた。その白シャツにネクタイの制服を見て、これを智樹さんが着ていたのか、見たかったなあとしみじみ思った。
そうだ、今度写真を見せてもらおう。
そう決心していると森野さんが戻ってきた。
「お待たせいたしました。さあ、まいりましょう」
あたしは、ふん!と、両手に力を込めた。新しい学校生活のはじまりだ。
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