第1章

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そんな中ひときわ大きなメーターが中央にある。 0を中央にプラスとマイナスへと伸びている。今はなんの反応も示していなかった。せっかく説明してくれているので、一つくらい質問しておこうと思って、このメーターが何か尋ねた。 「これは発せられた『気』の大きさを表すメーターです」 「あ、やっぱりマイナスの力もあるんですね」 あたしが何気なく言うと、斉藤さんも、航くんと遊んでいた家元も突然、驚いたように顔を上げた。 「菜月さん……。その、マイナスの力の話はどこで……?」 家元がいつもとは違った様子で尋ねるので、何かいけないことを言ってしまったのだろうかとあたしは焦った。 「えっと……智樹さんが、『気』はプラスの力を集めて出すと言っていたので、マイナスもあるのかなと思って……。それと『編纂 気の歴史』の29巻の一覧表にマイナス表示があったから……」 あたしの様子を見て家元は、表情をいつもの笑顔に戻し、言った。 「そうか。それは鋭い。さすが、鷹司家の嫁だ。マイナスの力というのは今までは正気道会の管轄外になっていたからよくはわからないのだが、昔はあったらしい。今はすたれてしまったようだ。29巻の一覧表は実は誤表記があってね。今再編集しているところなんだよ」 「あ、そうなんですか」 昔はあったというマイナスの力。どんなものなのか少し気になったけど、正気道会の管轄外なら、まあいいか。勉強する必要はない。 「さあ、そろそろお茶の時間だ。上に戻るとしよう。斉藤もひと段落しらた交代してあがってきなさい」 「おやつ!」 航くんはとびあがった。今日は朝と昼が一緒のブランチだったから、小腹がすいたなあ、とちょうど思っていたところだ。あたしも航くんと一緒におおいに喜んでしまった。
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