第1章

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次の日はがんばって早起きをし、きちんと奥様のヨガ講座を受けていると、智樹さんがスタジオまでジョギングの迎えに来てくれた。 「そろそろ終わる頃かと思って」 タオルを首にかけたTシャツ姿の智樹さんは、早朝だというのに今日もさわやかだ。 「そうね、今日はこれで終わりにしましょう。智樹、あまりとばしすぎないのよ」 「わかってるって」 智樹さんは笑顔で奥様に言った。 あたしは、ヨガでぽかぽかした体のまま奥様にお礼を言い、智樹さんに会って顔までほてって赤くなっているのが悟られないように、慌てて智樹さんのあとを追いかけた。 こんな朝早くから智樹さんに会えてうれしかった。今までは通学の電車に乗るまで会えなかったのに、今では一日中見ていることも可能だ。 実際のところ、それは無理だけど。 あたしは相当、智樹さんにまいってるんだなあ、と実感した。 顔のほてりも落ち着いた頃、智樹さんが振り返った。 「昨日は一日家の中だったから、窮屈だったろ?」 一人で外出する場合、しばらくは森野さんの車で、と言われていたので、なんだか悪くて、昨日はずっと家にいたのだ。まあ、特に用事もなかったし。 「ううん、新しいことばかりで、全然退屈しなかったよ」 今日はいい天気だから、外に出るのはわくわくする。それに智樹さんと一緒だ。 「ジョギングは近所?」 「そう、裏に公園があるから、そこでいつもジョギングしているんだ。菜月、体力は大丈夫」 「えーと……」正直ここのところ運動不足かも。 「中学まではテニス部だったんだけど、高校では何もしていなかったからなあ」 自信なげに言うと、智樹さんはうなずいた。 「お父さんの看病してたんだもんね」 そうなのだ。高校もテニス部に入るつもりだったけど、入学してすぐ父さんの病気がわかったから断念していた。 「今日から行く清華学園はスポーツが盛んな高校だから、また部活を始めるといいよ」 「え?いいの?」 嫁入りしたのに、普通の高校生もしていていいなんて、なんだか申し訳ない。 「もちろんだよ。結婚したといっても菜月は高校生なんだから、学校生活を楽しんで欲しい」 ああ、あたしはなんていい所に嫁いだのだろう。幸せすぎて恐いくらいだ。
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