第1章

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トゥインキーを見たとき、宮村は目を輝かせ「これが伝説のトゥインキー!!」と喜んで齧ったが、他の人間は、ボブ他2人くらいは食べたが多くは食べなかった。それはトゥインキーのせいではない。  サクラがやった大爆発によって、猛獣や狂人鬼たちは焼き払われ、その肉の焦げる匂いが充満し凄まじい死臭が漂っている。けして楽しくピクニックできる状況ではない。 「焼肉が食えへんなったらどう責任取るねん、サクラ」 「しらん」  別にこの程度の死臭は何ともない。第一、一番燃えているのは厚い毛皮に包まれた猛獣たちで、人はそれほど燃えていない事をサクラだけは分かっている。狂人鬼たちの多くは爆風で家屋に押しつぶされたり、吹っ飛ばされた数が多い。  片山と田村は、運営側が用意していた携帯保存食を食べていた。片山、宮村、田村の歴戦の生き残り組は、もう死臭には慣れてしまった。死臭に悩むより体力切れで動けなくなるほうが怖い。もう4日目……あと6時間だ。先の猛獣たちがファイナル・ゲームの前倒しだったのかどうかは分からないが、村田がこのままゲーム終了まで何もしてこないとは考えにくい。村田の手元にはまだ<死神>が残っている。 「しっかし、派手にやったもんやな~」  飛鳥は相変わらず暢気な口調で住宅地のほうを見ていた。  サクラが起こした爆発は、予想以上に威力があった事は炎が弱まってきて分かってきた。  元々使用したのが軍用の地雷と手榴弾、そして軍用C4爆弾だから、炎ではなく強烈な爆風で吹き飛ばし破片で薙ぎ払う事に最大の威力を発揮した。そのため火災は爆発の規模に比べて少ない。  爆発によって住宅地の1/3は跡形もなく破壊され、1/3は半壊。……つまり住宅地の2/3に影響を与えた。役場とその周辺を除き、住宅地の電柱も吹き飛んだ。元々30年前に放棄された築年数50年以上の木製家屋だからもろかったのも要因の一つだ。 爆発で生き残った狂犬や狂人鬼たちの姿がチラホラ見えるが、生き延びたというだけで熱波や破片などに襲われこれまでのように元気はない。正に空襲の跡の様相だ。 「しっかし、変だな」  サクラは大きく口を開け残っていた半分に減ったトゥインキーを一気に丸呑みして、それをコーラで流し込みながら呟く。 「変なのは、爆弾持ってわざわざ死神島に帰ってくるお前や」  飛鳥のツッコミの間にトゥインキーはサクラの胃の中に納まった。
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