第1章

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「銃を捨てるのはそっちだ! クロベ!!」  羽山はユージを睨みながら、強くセシルのこみかめに銃を押し付けた。セシルは無表情で抵抗もせず沈黙している。 「墓穴を掘ったな。もう言い逃れできんぞ、羽山」 「黙れ! この女を殺すぞ」 「最初で最後の警告だ。銃を捨てて投降し捜査に協力しろ。そうすれば命だけは助けてやる」  ユージは全く動じない。羽山は露骨に不快感を露にし、さらに強くセシルを締め上げ、自分の体をセシルに密着させ、セシルを完全に盾にした。それを見たユージも、表情を変えずため息をつくと、意外な命令をセシルに告げた。 「力を抜け、セシル」 「はい」 「いいか、松浦医師。そして羽山。その娘は音楽家のセシル=シュタイナーだ。名前くらいは聞いた事があるだろう、天才音楽家だが、CIAの諜報員だ」 「CIA!?」  驚きの声を漏らしたのは松浦だ。よく見れば、確かに世界的有名天才音楽家のセシル=シュタイナー本人だ。昨日のワイドショーにも出演していた。芸能関係に疎い松浦でも知っている顔だ。そんな有名人が実はCIAエージェントだったなんていうとんでもない暴露をよりにもよってユージが口にしたのか、訳が分からない。それは羽山も同様だ。  だが、これこそがユージの死刑宣告だった。 「これでお前たちは、CIAの極秘情報を知った。アメリカ当局はこの秘密を知った人間を抹殺することになっている」 「お前が自分で喋ったんだろうがっ!!」  激昂する羽山。だが松浦は今の一言で、ユージが自分たちを殺す気だと知った。 「私は関係ない! 他言しない、言うとおりにする! 協力する!!」  松浦は降伏した。ユージは一瞥し「なら黙ってその場から動くな」と言い、ゆっくりとDEの銃口を羽山に向けた。 「時間が惜しいから、はっきり言う。セシルを解放して俺に捕まるか、セシルを盾にしたまま射殺されるか決めろ」 「どんな立場でそんな事が!!」 「よし分かった。お前は射殺する。言っておくが、お前がどの程度あのデス・ゲームに関連しているか大体知っている。お前は真の黒幕じゃない。今回の企画にはお前以外にも何人もトップがいることは知っている。だからお前はここで殺す。セシルを盾にしているつもりだろうが無駄だ。僅か一センチでも隙があれば俺はそこを撃ち抜き、そして止めを刺す。脅しじゃないぞ」 「その前にこの小娘を撃つぞ」
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