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タイには、大きめなタンブラーにソルティードッグもどきを作る。 スピリタス入りで。 カクテルの神様、いい加減な俺を許してくれ。 「それ飲み終わったら、これな。」 スクリュードライバーの隣に、ドスン、と置く。 さあて、そろそろいくか。 「ハルさ、朝まで飲むなんて言ってるけど、そんな事したら中川に怒られるんじゃね?」 「いいんだよっ、どうせあのタコ、明日まで帰ってこないんだし。」 「泊りがけで女のとこ行くんだよ。 まあ、そんなことはどうでもいいんだけどね。 今日はテツハルさんがいないから、閉店まで仕事することになったじゃない? ホントいうと接客なんて自信なくて。 でも頑張れ自分って気合い入れようとしてるのに、あのタコ、なんて言ったと思う? “ヨウジと仲良くちまちま小銭稼ぎ頑張れよ”だって。 その言い方が、すごく感じ悪くて、思い出すほどに、嫌な気分になるわ。 はああー。」 一気にしゃべったかと思うと、ミモザの残りをひと息で飲み干した。 「あたしみたいなのが頑張ってるつもりでも、ああいう人から見たら、ちまちまでしかないんだね。 はああー。」 今度はキールロワイヤルの残りをイッキ飲み。 「あの人、あたしの事嫌いなんだよね。知ってるけどさ。 嫌いなら、さっさと追い出せばいいのに。 はああー。」 ああ、苺シャンパンもひと飲みか。 隣りでタイが苦笑いをしながらハルを見ている。 中川に対するハルの頑な態度は、相変わらずのようだ。 秋実の不始末を収めるための、まさかのエライい人の采配。 納得した上でのこととはいえ、2人の関係は、始まりからイビツだった。 秋実が中川にハルを引き合わせてからもう1年くらいか? 最低限の関わりでいようとする2人の連絡をオレが取っていたこともある。 最初は他人の揉め事の後始末に巻き込まれて、腹を立てていた中川が、あっという間にハルに惹かれていった。 今聞いてる話だって、ただの痴話喧嘩だ。 もう十分に、ハルに振り回されてるじゃねえか、中川。 他の女の影をちらつかせて、ハルにヤキモチ焼かせようとでもしたのか? 〝そんな事はどうでもいい”、なんて言われたら、嫌味のひとつも言いたくなるかもな。 大人げないね。 せいぜい今夜は、気を紛らわせてきたらいい。 さーて、オレはこの隙を狙って、点数稼ぎするか。
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