8 #2

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8 #2

ーーー春野ーーー コウが帰ってきて、3人でご飯にした。 オヤジ組は3人でどこかに出かけたらしい。 タイは、カレー皿に盛ったご飯の上に、シチューをかけた。 コウはあたしと一緒。 1杯目は、お皿にシチューのみ。軽く焼いたバゲットを添える。 2杯目は、シチューオンザライス。 レモンスライスを浮かべた水を飲みながら、3人でゲラゲラ笑いながら食べた。 「だって、“コーガン、ムチ”だからー。」 「てっきりそういう方面かと思うだろ?」 「睾丸に鞭!」 「ヤバイですね。」 「そうそう、でも、島見っておっさんがさ、そういう趣味の人だと思ったからさー。」 「SM?」 「『あんたにぴったりの言葉ですね。』って言ったわけよ。」 「うわっ!」 「きゃはは!」 「ちょっ、ここ笑うとこ?」 「だって、ねぇ?ぷぷぷ。」 「ハルさん、ここは一応恥じらっておきましょうよ。女の子でしょ?」 「今さらー。」 「これ知ったら、そのオッサン、もう一回タイさん締めに来ますよ。」 「ヤメテ!」 島見から、“礼儀を教えてもらう”までのいきさつを話しながら、 なんでもない風にタイが言う。 「だから、ハルさん、気にすることないっすからね。」 「そうそう、その通り。」 コウが続ける。 気付いてた? 食べながら、笑いながら、タイの手元を見る度に、やっぱり申し訳ない気持ちになって。 “ごめんね”って言いたかった。 「・・・タイ君。」 ぐすっ。 「あっ、ハルさん、アイス食べましょ。」 コウが冷凍庫から出したのは、バニラのアイスクリーム。 いつも食べているのじゃない、懐かしいアイス。 紙カップに紙のフタ。子供のころから食べていた“普通のアイス”。 『時々食べたいなって思うんだけど、最近お店で見ないんだよ』って、コウと話していた、そのアイス。わざわざ探してくれたの? 「コウ、君?」 ぐすっ。 泣いちゃダメ。2人が困る。 「ありがと。おいしいねっ。コウ君は、気の利くモテタイプだよね。」 何か話せ、自分。 「そうだよねー、あの島見ってオヤジが悪いヤツ!、SM趣味はどうかわかんないけど、変態入ってたしね。」 「あたしと取っ組み合いしながら、興奮してるんだから!」 「もしまた会ったら、必ずあたしのエルボーかましてやるわよっ!」 はあはあ、一気に喋ったから、アイスが冷たくておいしい。
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