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店の2階と3階は、ヨウジさんの居住スペースだ。 2階のソファに座って、冷したタオルで瞼の腫れを取ろうとするけれど。 「ハルは泣くと顔がすごい事になるんだから、気をつけなよ。」 「うん、ごめんなさい。」 ヨウジさんに凭れて、背中をトントンと優しく叩かれていたら涙は止まった。 目は充血して周りは腫れて、化粧は全部とれただろう。 眉毛のないすっぴんで仕事するのは、恥ずかしいな。 化粧道具なんて持ってきてないし。 困ったなー。 でも、ヨウジさんの隣は気持ちいい。 「もうちょっとこうしてていい?」 「いいよー。まだ時間も早いし、大丈夫だよ。」 体の力を抜いて、ヨウジさんに寄り掛かる。 あったかい。 ずっとこうして、隣に居られたら。 あたしはワガママすぎるな。 泣きすぎてぼんやりしてきた頭で思う。 「ヨウジさんの新しいお店のことなんだけど。」 「ハル?」 「もう日は決めたの?」 「いや、これからだよ。慌てるのは好きじゃないし。」 「そうなんだ。」 「ハルは大丈夫? 余計なこと言ったかな。」 「大丈夫だけど、もうちょっと、時間が、欲しい、な。」 「時間?」 「う・・・ん。」 口を動かすことも億劫な位、ほあーっと眠気がやってきて。 逆らう間もなく、落ちるようにあたしは眠りに沈んでいった。
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