11

7/27
前へ
/35ページ
次へ
「ハル、ちょっとマズイかもな、その顔。」 ヨウジさんが、にやっと笑っている。 「え-、超ブス顔になってる?どうしよう。」 目が醒めてから、キレイに顔を洗ったのに。 洗面台にあったクレンジングを借りて、すっきりさっぱり洗顔した。 何でここに女性用のクレンジングがあるの?と思いつつ。 まあいつか突っ込んであげよう。 「そんなツルツルのすっぴん顔、どうしたんだって感じ。」 「きゃー、眉がないわ、ヨウジさん、メイク道具はないよね?」 「あるわけないっしょ。」 そうですよね。 「ちょっと買ってくる。ヨウジさん、サングラス貸して?」 「どこ行くの?」 「ドラッグストア。」 「じゃあ、俺も行くよ。サングラスは、怪しすぎるからダメ。」 「1人でも大丈夫なんだけど。」 「俺も買い物あるの。」 「一緒に買って来るけど?」 「コンドームだよ。」 ぎゃっ、何言ってんの、このヒト。 「もう、ヨウジさんったら!」 「あはは。」 「行くんなら、そのシャツ、着替えた方がいいよ。ごめんね、あたしのせいで、汚れちゃった。」 「ああ、気にするな。ちょっと待ってて。」 あたしはゆっくりと靴を履いて、玄関のドアを開けた。 外階段をとんとん降りる。 「ハル、待って。」 上半身裸のヨウジさんが、ドアに鍵をかけて降りてきた。 「何で裸?」 あたしに追いついてから、手に持っていたTシャツを着るヨウジさん。 「置いてっちゃ、いやーん。」 「ヨウジさんたら。」 まくれ上がった裾を直してあげながら、くすくす笑ってしまう。 「国道沿いの店に行こう。あっちの方が店、大きいし、車で行ける。」 「うん、ありがとう。」 2人並んで歩き始める。 何歩も進まないうちに、駐車場からこちらを見ている中川に気付いた。 見た瞬間に、回れ右をして逃げたくなるような、怖い顔をしている。 「あれ、タツヒコ?どうした?もう迎えに来たのか?」 ヨウジさんは呑気に声をかける。 ひえー、こんな恐ろしいオーラ出してる人に、よく平気でいられるな。 「ハル?」 立ち止まったあたしを振り返るヨウジさん。 中川がこっちに歩いてきた。 ヨウジさんに隠れるように寄り添う。 「ハル、今日はタツヒコと帰りな。」 「え?」 帰る?まだ開店前なのに? 「タツヒコ、ハルはお前のせいで泣いたんだからな。」 ヨウジさんが、笑いながら言った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加