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「ハル、ちょっとマズイかもな、その顔。」
ヨウジさんが、にやっと笑っている。
「え-、超ブス顔になってる?どうしよう。」
目が醒めてから、キレイに顔を洗ったのに。
洗面台にあったクレンジングを借りて、すっきりさっぱり洗顔した。
何でここに女性用のクレンジングがあるの?と思いつつ。
まあいつか突っ込んであげよう。
「そんなツルツルのすっぴん顔、どうしたんだって感じ。」
「きゃー、眉がないわ、ヨウジさん、メイク道具はないよね?」
「あるわけないっしょ。」
そうですよね。
「ちょっと買ってくる。ヨウジさん、サングラス貸して?」
「どこ行くの?」
「ドラッグストア。」
「じゃあ、俺も行くよ。サングラスは、怪しすぎるからダメ。」
「1人でも大丈夫なんだけど。」
「俺も買い物あるの。」
「一緒に買って来るけど?」
「コンドームだよ。」
ぎゃっ、何言ってんの、このヒト。
「もう、ヨウジさんったら!」
「あはは。」
「行くんなら、そのシャツ、着替えた方がいいよ。ごめんね、あたしのせいで、汚れちゃった。」
「ああ、気にするな。ちょっと待ってて。」
あたしはゆっくりと靴を履いて、玄関のドアを開けた。
外階段をとんとん降りる。
「ハル、待って。」
上半身裸のヨウジさんが、ドアに鍵をかけて降りてきた。
「何で裸?」
あたしに追いついてから、手に持っていたTシャツを着るヨウジさん。
「置いてっちゃ、いやーん。」
「ヨウジさんたら。」
まくれ上がった裾を直してあげながら、くすくす笑ってしまう。
「国道沿いの店に行こう。あっちの方が店、大きいし、車で行ける。」
「うん、ありがとう。」
2人並んで歩き始める。
何歩も進まないうちに、駐車場からこちらを見ている中川に気付いた。
見た瞬間に、回れ右をして逃げたくなるような、怖い顔をしている。
「あれ、タツヒコ?どうした?もう迎えに来たのか?」
ヨウジさんは呑気に声をかける。
ひえー、こんな恐ろしいオーラ出してる人に、よく平気でいられるな。
「ハル?」
立ち止まったあたしを振り返るヨウジさん。
中川がこっちに歩いてきた。
ヨウジさんに隠れるように寄り添う。
「ハル、今日はタツヒコと帰りな。」
「え?」
帰る?まだ開店前なのに?
「タツヒコ、ハルはお前のせいで泣いたんだからな。」
ヨウジさんが、笑いながら言った。
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