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ーーー春野ーーー
「やっぱり、あたしには難しいかな?」
ヨウジさんと2人、開店前の店で話している。
「店自体は、シンプルな経営だし、無理な事じゃないよ。」
「今の状態で続けるなら、赤字にはならないけど。」
歯切れの悪い言い方に、少しイラッとしながら、ヨウジさんを見た。
マジ顔のヨウジさんと目が合う。
「ハル。」
「ハイ。」
「今さらながらだけどさ。いいのか?」
「ん?」
「この店のオーナーは中川。ハルはそれを任される。」
「ヨウジさんの後釜って事でしょ?」
「ハルがやるってことは、状況も、意味合いも変わるよ。」
「あー、なんとなくは、わかるかも。」
ヨウジさんが、居ずまいを正す。
「丁度いい機会だから、話しておくよ。」
何だろう。身構えてしまう。
「オレと、アキ、ジュンとタツヒコ。」
ヨウジさん、秋実、島見、中川。
「ガキの頃からつるむ仲間だったけど。」
胸の下がぎゅっと縮む。
「今は、ハルも知ってる通り、バラバラだ。」
ヨウジさんが淡々と話す。
4人の出会いから、今日まで。
全員に共通しているのは、ヤクザの子として生まれたこと。
ただし、ヨウジさんとあたしの親はいわゆる下っ端で、中川と島見の親は幹部。
同じ組の中で親たちには上下はあったけれど、子供たちはあまり構えることなく遊びあう仲だった。
壊れたのは、うちの親の事件の後。
1人は死んだ。
1人はヤクザをやめた。
1人は変わらず。
1人は地位を失った。
話し終わったヨウジさんが、大きく息を吐く。
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