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ーーーヨウジーーー
「なあ、ヨウジ。」
珍しく、俺の機嫌を伺いながら話すタツヒコ。
「なんだー?」
「アイシテルって言った後は、プロポーズだよな?」
ぶっっ。
俺は飲みかけのボウモアを吹きそうになる。
「誰が?」
「俺が。」
まさか。
「ハルに?」
「決まってるだろ。」
「ちょっと待て。ヨウジお父さんは聞いてないぞ。」
「今言った。」
まじまじとタツヒコを見る。
ふざけている訳じゃないみたいだ。
「愛してるって言ったのか?お前が?」
「春野も言ったぞ。」
「無理やりお前が言わせたんだろ?」
「言いたくなるようにしてやっただけだ。」
タッちゃん。
ハルに関してはバカだと思ってたけれど、ここまで来るとは。
大丈夫か?
「何焦ってるんだ?」
「そう見えるか?」
「お前らしくないぞ。秋実が気になるのか?」
「・・・そうかもしれない。」
帰って来るのか。
少し早すぎないか?
「まだ2年経ってないだろ?」
「頑張ったんだろ、色々と。」
タツヒコの苦笑いに、答えがあった。
ハルのためか。
取り返しに来るのか?
秋実、いくらなんだも無理だろう。
遅すぎだ。
「プロポーズはともかく、お前、自信持てよ。」
「ヨウジ。」
「ハルは間違いなくお前を選んだんだよ。あんな幸せそうなハルを、俺は初めて見た。」
「そうなのか?」
「俺が言うんだぞ。信じろ。」
「はは、そうだな。」
ペリエを飲み干してタツヒコは立ちあがった。
「ハルを迎えに行くのか?」
今夜、ハルは同業者の集まりに行っている。
「ああ、虫退治に行ってくる。」
「タッちゃんも、苦労するねー。」
「邪魔したな。」
後ろ姿に『毎度。』と言いながら、グラスを傾ける。
俺は変わらない。
ハルが誰といようとも。
ハルのためなら何でもやる。
ハルを泣かせるなら、タッちゃんでも許さない。
せいぜい悩めばいい。
悪いな、タツヒコ。
俺はハルの味方なんだよ。
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