19 #2

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追いかけてきたヨウジと2階へ上がっていくと、春野は、隠れるように丸くなっていた。 静かに近づく俺の後ろで、ヨウジが大きな声を出す。 「ハル、起きろ!タツヒコが来たぞ。」 ビクン、ガバッと起きた春野。 俺とヨウジを見て、大きく目を見開いた後、 「ごめんなさい。」 と言って下を向いた。 こんな顔をさせたかったわけじゃない。 春野は俺の顔を見ようともしない。 「大したことないの。ちょっと転んで。」 毛布をたたみ始めた春野の足元。 包帯の白さが目に刺さる。 「春野?」 「お騒がせしてごめんなさい。ほんとにもう大丈夫だから、中川さんは仕事に戻って。」 中川さん? 俺のことか? 「ハル、今日から暫く俺ん家に来なよ。いいだろ、タツヒコ?」 「いいわけないだろ、帰るぞ春野。」 ヨウジは本気で言ってるのか? 「今日はヨウジさんの家に泊まりたい。」 春野までどうしたんだ? 本当に俺はもう間に合わないのか? 「決まりだな。」 飄々としているヨウジを睨む。 駄目だ。 絶対に許さない。 「誰にも渡さない。春野は俺のものだ。」 春野の手を掴んだ。 「帰るぞ。」 「ヤダ。嘘つき。あたしのことなんか、もういらないくせに。もうほっといて。あたしはヨウジさんのとこに行くの。」 やっとまともに喋ったと思ったらこれか? 春野の前に腰を下ろして、無理やりに目を合わせた。 「逃げても連れ戻す。閉じこめて外に出さない。それでもだめなら、春野を殺す。」 両手を取って、唇を付ける。 「春野、もう俺のこと好きじゃないのか?嫌いになったのか?」 「好きじゃないのは、タツヒコの方じゃない。うっ。」 ポトン、ポトンと涙が落ちてくる。 「俺は春野が好き。春野がいないと生きていけない。考え過ぎて、いろいろ間違った。ごめん。春野、ごめん。」 「もう、どうしたらいいかわかんない。ぐすっ。」 「帰ろう、春野。一緒に帰ろう?」 「ヤダ。足が痛くて動けない。」 「うん、春野は何もしなくていいから。」 抱き上げた春野の軽さに驚く。 春野との食事すら避けていた自分を心で激しく罵った。
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