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部屋に着いて、膝に春野を乗せたまま、俺は謝り続けた。
一晩中でも、何日でも、許してもらえるまで、春野を離さずに、許しを請い続ける気でいる。
ごめん、許して、としか言えない俺に、春野がとうとうキレた。
「ただ取り敢えず謝ればいいと思ってるんでしょ。」
「ごめんで済めば警察はいらないって、子供でも知ってるよ。」
「自分の何が悪かったと思ってるの。」
怒った春野は、かわいい。
「俺の全部が悪い。」
「それ、返事になってないよ。」
「うん。好きだ。」
「バカタツヒコ。」
「うん。愛してる。」
春野にバカと言われて、嬉しくなる。
「もっと、怒れよ。」
「へ?」
「俺の悪いところ、叱ってくれ。」
「バカ。」
呆れた春野もかわいい。
固かった春野の体からだんだんと力が抜けて、オレに馴染んでくる。
「タツヒコ。」
「うん。」
「あたしのこと、なんで・・・」
「うん?」
「・・・アイス食べたい。」
少しの間と、春野の明るそうな声。
俺の春野レーダーが反応する。
「アイスは後で食べよう。何て言おうとしてたんだ?」
「チョコのがいいなって。」
「春野。」
まだ俺の顔を見ようとしない春野。
腹に力が入る。
ヨウジに言わせると、こういうところが大事なポイントだと。
「春野?」
持ち上げた掌にキスして、そのまま唇を手首に滑らせる。
「教えて?」
時間をかけて、ゆっくりとじっくりと話して。
俺は初めて知った。
歪な形で始まった俺たちの関係に感じている春野の引け目。
好きだと思うほどに自信がなくなる春野の心。
常に感じている別れへの不安。
俺を信じきれない事への自分自身への嫌悪感。
俺は充分に自分の気持ちを伝えているつもりだった。
『ハルにわかってもらえなきゃ、クソだ。意味がない。』
ヨウジの言葉が改めて俺を叩き潰す。
俺は何もできていなかった。
「あたしに触らなくなったから。」
「タツヒコは、もうあたしとはシタくないんだと思ってた。」
腕の中の春野が、哀しくて愛しくて、言葉もなく抱きしめる。
こんな言葉を言わせた自分を罵って。
こんな言葉を言う春野が、かわいくて、かわいくて。
「山岡やヨウジに怒られたんだよ。」
「自分の欲を優先させて、春野を大事にしていないって。」
「ちゃんとできないなら、春野は任せられないと言われた。」
「隣に春野がいると、俺は我慢なんてできないんだ。」
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